先日、掲題の映画がBS放送されたので録画しておいた。昨日、観た。
此の映画が公開当時、私は此れをリアルタイムで観ている。観た後、私は何とも嫌な感じが残り、その感じが何年も我が心を蝕(むしば)んでいるようで閉口したものだった。竹光での強引な自害の場面が余りに残酷だったからだ。この場面のリアルさは当時の私にはショックだった。
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あれから、半世紀あまり過った今、此の映画を再見する気になったのは、例の自害シーンは既に私には『免疫』がついており、そういう意味で冷静に此の映画を観ることが出来ると思ったからだ。 再見して、なるほど、この映画のリアリズムは秀逸だと今更ながら感じいった。
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黒澤明流の徹底したリアリズムでありながら一種の様式美があって、武満徹の、破滅するような琵琶の一瞬の乾いた響きが、各場面、場面で緊張を促す。この張りつめた感じは能の緊張を連想させる。また話の展開も面白い。これは脚本(橋本忍)の手柄だろう。
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『切腹』という此の国の遠い昔の習俗は、その残忍さという点から見れば、此の国以外の他の国には、より残忍な習俗があるに違いない。例えばギロチンは切腹より残忍ではないと言えるか? 少なくとも『死の美学』としては、私は、ギロチンよりも、或る時代の此の国の切腹のほうが儀式として潔いと思わなくはない。
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さて此の映画が発表された昭和37年とは、どんな年だっただろうか?
映画は歌謡曲同様、其の時代を写す。あの時代は以下に示すような年だった。
この表を見て、私は、ああ、あの時代だったかと少し感慨深い思いがする。
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1962年(昭和37年)キネマ旬報ベスト10
邦画
1位 私は2歳 市川崑監督
2位 キューポラのある街 浦山桐郎監督
3位 切腹 小林正樹監督
4位 破戒 市川崑監督
5位 椿三十郎 黒澤明監督
6位 人間 新藤兼人監督
7位 おとし穴 勅使河原宏監督
8位 秋刀魚の味 小津安二郎監督
9位 にっぽんのお婆ちゃん 今井正監督
10位 秋津温泉 吉田喜重監督
洋画
1位 野いちご イングマール・ベルイマン監督
2位 ニュールンベルグ裁判 スタンリー・クレイマー監督
3位 怒りの葡萄 ジョン・フォード監督
4位 情事 ミケランジェロ・アントニオーニ監督
5位 太陽はひとりぼっち ミケランジェロ・アントニオーニ監督
6位 尼僧ヨアンナ イェジー・カワレロウィッチ監督
7位 ウンベルト・D ヴィットリオ・デ・シーカ監督
8位 夜 ミケランジェロ・アントニオーニ監督
9位 ハスラー ロバート・ロッセン監督
10位 噂の二人 ウィリアム・ワイラー